”大地は祖先からの贈り物ではなく子孫からの借り物である”

2009年02月17日

毎日新聞記録賞「地区賞」受賞!いのちを育む有機稲作

いのち育む有機稲作
   *はさ掛けトラスト2年目を迎えるとともに*ゆうきハートネット仲間達が各々の田んぼで情報交換しあい学びながら取り組む有機無農薬稲作2年目の事業としても意味を持つ今年の稲作をわたしの田の実績に添いながらふりかえって述べてみたいと思う。
1. 雑草対策
除草剤を使用しない有機稲作は雑草との戦いに終始するといっても過言ではないくらい。昨年までは取っても次々に生えてくるヒエの抜き取りにエネルギーを費やし、はさ掛けトラスト会員の皆さんの応援を受けたが収穫時にはかなりの種を落としてしまった。それに収量的にも慣行時に比べて半減し、満足の行く結果を残せなかった。今年は稲葉光圀氏が主宰する民間稲作研究所の方式「無農薬有機のイネつくり」→多様な水田生物を生かした抑草法と安定多収のポイントを全面採用した。4.5葉期の成苗植えによる深水管理をすることにより、あとから生えてくる雑草のヒエを窒息状態にして抑えこもうとする試みだ。そのためには今まで農協から購入していた温室育ちの稚苗では耐えられない。無加温の自然育苗で草丈が15cm以上、5cm程度の湛水管理をしても水没しない苗、つまり4,5葉苗を独自に作ることになる。苗作りは4月10日の種まきから始まった。いや厳密には3月10日の種モミ処理からはじめたことになる。ゆうきハートネットの仲間とともに、有機栽培農家から購入したヤマヒカリの種モミを塩水選した後、水温60度の温水に10分浸して伝染性病害虫を防除する。その後はきれいな低温流水に浸して種まきを待つ。4月10日の種まきには多くの会員の協力を得て手早くすますことができた。4,5葉苗を作るためには従来のように苗箱1枚あたり60粒以上では密植すぎるので40粒程度の薄蒔きに留意した。薄まきすることにより一株あたりの苗も大きくなり、1〜3本で田植えが出来る。慣行農法の機械植えでは5〜6本を1株植えとするために、茎が細くなってしまい、倒伏の原因となる。1〜3本で植えられた苗は茎が太くて倒れにくいとともに1穂粒数も多く採れることになる。露地で1ヶ月以上にわたってゆっくり育てられた苗は目標とする4,5葉期以上の丈夫なものとなって5月26日の田植えを迎えることが出来た。その後の状況は田植え前の代掻きのまずさから田んぼの均平が不十分で深水にならなかった一部を除き、ヒエの発生は見事に抑えることが出来た。まず雑草対策の第一ステップはクリアーできたといえる。次は後で述べるこなぎ、おもだか等の水生雑草対策が課題となる。
2. なまずの養殖
県河川環境研究所と町の依頼でなまずの養殖実験に協力した。池や水槽でなまずを養殖すると共食いで稚魚数が激減してしまうとか。水生動物などの餌が豊富に存在する無農薬の水田ならば共食いが避けられるとの見通しで6月26日孵化したばかりの1〜2ミリの稚魚8400匹を放流。約3週間後の7月21日に回収した。回収率は約1割、体長3〜4cm約3週間で30倍以上にもなるなまずの成長にはおどろく。旺盛な食欲にもよるがなによりもこの無農薬田には、やごやミジンコをはじめ、かれらにとっては豊富なえさの存在が成長を促進したことになる。放流時にはかえるなどに食べられていたと思われるが、生育後半にはおたまじゃくしや小型の蛙まで彼等のえじきになったようだ。   一定の大きさに成長して共食いの心配の無くなったなまずは(財)クオーレの里の養魚池で飼育され、いずれは美濃白川銘産のなまず料理として観光客に振舞われる予定となっている。
3. 浮き草―
田植え直後からアオウキクサやアミミドロが田面を覆いはじめた。昨年も田の3分の1くらいが覆われたが、農薬残留がほぼなくなった2年目の今年は、早くから広い範囲で浮き草の繁茂がすすんで、7〜8割程度が覆われた。なかには環境省指定の絶滅危惧種イチョウウキゴケも見受けられる。初期から浮き草によって覆われた部分ではほぼ完璧に雑草を抑えることが出来たが遅くなって覆われた部分や浮き草が発生しなかった部分では大量のこなぎの繁茂により、養分を取られた稲苗の生育が悪く、最後まで貧弱な茎と穂の状態で終わってしまった。日光の入光をさえぎって雑草の生長を抑える浮き草や藻類をいかに広くしかも早期に作るかがきめてとなる。田植え直後に米ぬかやくず大豆を散布すると、急激に糸状菌や細菌に食べられて分解され、水の中は酸素不足になる。そうすると、草の発芽が抑えられ、出たばかりの芽が枯れていく。今年はこめぬかを粉状態のまま散布したために、水面に浮かんだ米ぬかが風に流されてしまった。養分ともなるこめぬかや大豆かすなどをいかにタイミングよく均等に散布するか米ぬかやくず大豆をペレット状態にして散布する工夫をするなど来年度の課題である。
なお浮き草は用水に含まれる過剰な窒素や燐酸を吸収し、水質を浄化するとともに空気中の炭酸ガスを取り込み、光合成を盛んにして酸素を空気中に放出する効果がある。国内の多くの水田でこのような取り組みがなされたなら地球の温暖化防止にも少しは貢献できると思うのだが。
4. いきものの躍動―
除草剤を使用し、早期に中干しを繰り返す隣の慣行農法田に比べて湛水状態の私の田んぼは多くの命でにぎわった。畦にしゃがんで覗いてみるだけでも沢山の小さな生き物達の動きが見える。蛍のえさにもなるモノアラガイは貝とは思われないほどに動きが激しい。イトミミズや水虫、ミジンコたちも各々独自のダンスを繰り返している。こうした微生物達の活動が雑草の発芽を邪魔することになる。除草効果にはつながらないもののおたまじゃくしやどじょう子負い虫などの水生昆虫や動物、蜘蛛やとんぼとウンカなどの益虫、害虫、ただの虫たちが田んぼの中の世界をいろどっている。それらを狙って飛んでくる6〜7月はツバメ、8〜9月はあかとんぼが上空を舞う。これらの生き物の数が隣の田んぼにくらべてあきらかに多い。いつも決まったように朝方舞い降りる青鷺を見て近くの老人からはおまえの田では青鷺を飼っているのかと疑われる始末。害虫も多いということだろうが、さして目立った被害がないところをみると彼等の天敵たちの数も多く活躍してバランスをとってくれたことだろう。
今、除草剤を使わない稲作として合鴨に雑草を食べさせる方法が脚光を浴びているがこの方法では雑草だけでなく水田に生息するすべての生き物が合鴨に食べられてしまい、稲と合鴨以外は死の世界と化してしまう。
水田生物の多様性を豊かにすることで抑草につなげるとする民間稲作研究所の方法はいままでの稲作技術では考えもされなかった手法だが、共生の時代の今。自然の生態系を大切にしながら米の生産に取り組む、時代に叶った農法として評価したい。
来年は本格的に田んぼの生き物調査に取り組みたい。
5. はさ掛け乾燥
効率性をもとめる近代農法ではコンバインで刈り取った籾はすぐにライスセンターに持ち込まれ火力で乾燥にかけられる。含水率20数%から一気に10数%程度になる過程で食味の低下は避けられない。         はさ掛け米ではその過程を自然乾燥で2週間かかって行う。今年のはさ掛け後の含水率は15,7%となっていたが、籾摺り段階で水分を調整し14,5%とした。ほとんどを自然乾燥に任せることにより、品質と食味を保つことが出来る。 はさ掛け乾燥米は翌年の梅雨時を越しても食味が落ちないといわれているが、計器では計れない微妙な違いがそこにあるのだろう。まさにスローフードの極みである。名古屋オアシス21の朝市村(ファーマーズマーケット)では従来の乾燥米より2割高く販売しているにもかかわらずはさ掛け米の味を求めて訪れる客に量的に対応できないまま終わってしまった。たしかにお碗1杯20円程度の米が24円になったとしても、添加物漬けの市販おにぎりの1個100円に比較すればずっと安い。安心安全プラス食味さらには生態系を豊かにする効用を考えるなら有機はさ掛け米の値打ちは金には換算できないもっと大事なものがあると思う。
さて、会員の皆さんの協力によってはさ掛け米も収穫の段階を迎えるが9月24日の稲刈りは前夜の大雨でせっかく乾いていた田んぼもぬかるみ状態となってしまい、作業に難渋した。
その後も天候不順のため田の乾きが悪くてバインダーが入らずすべて手刈り作業のはさ掛け、昔の農家の重労働をしっかり体験した。脱穀、籾摺り後の収量は昨年より向上したものの元肥不足とこなぎに養分を取られて期待通りにはならなかった。先にも述べたように稲の養分を横取りするこなぎ対策と土作りが今後の課題となる。

はさ掛けトラスト生産農家  西尾勝治

* はさ掛けトラスト:会員は田んぼ30坪を1口として、年会費3万円を出資。収穫された有機栽培米は会員で均等配分するしくみ。会員は種まきから収穫までさまざまなイベントに参加する。

ゆうきハートネット:有機農業を志す町内農家の任意の団体。当面は、はさ掛けトラストと協力して無農薬有機の米つくりにあたっている

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